■休む間もなく…精力的に各国首脳と会談
21日、G7広島サミットを終え広島空港から帰国の途に就いた、ウクライナのゼレンスキー大統領。今回の訪日では、新たな支援を得るため奔走し、午後9時半ごろ、日本を後にしました。
そして、SNSに新たなメッセージを公開しました。
ゼレンスキー大統領:「ウクライナはG7に参加できて光栄です。G7には感謝しています」
世界で初めて原子爆弾が投下され、14万人もの命が奪われた、被爆地「広島」。あれから78年の時を経て、「この地」を踏みしめた戦時下の大統領は帰国前の会見で、静かにこう語りました。
ゼレンスキー大統領:「広島で起きたこととウクライナが破壊されていることを見ると、歴史的に比較するのは公平ではないが、正直に言いたいことは、広島の破壊された写真は、破壊されたバフムトを思い起こさせます。ロシアが、世界で最後の侵略国になりますように。この戦争が終わった後は、世界でずっと平和が続くよう願っています」
それは、まさに電撃的な訪問でした。20日、フランスの政府専用機が広島空港に着陸。降り立ったのは、ウクライナのゼレンスキー大統領でした。
当初はオンラインで参加するはずでしたが、前日の昼ごろ、海外メディアが日本への電撃訪問を速報したのです。
CNN:「ちょうど今、ゼレンスキー大統領がG7首脳らとの会談のため、日本に入るとの情報が入りました。極めて異例なことです」
ゼレンスキー大統領の来日は、ロシアによる侵攻後初めてで、広島への訪問も初めてのことです。
戦時下の大統領の来日に、広島はさらなる緊張感に包まれます。日本中から警察官が集結する厳戒大勢のなか、大統領の車列は宇品島に入っていきました。
ホテルに到着したゼレンスキー大統領は、休む間もなく、精力的に各国首脳との会談を重ねます。
イギリスやフランスといった、ウクライナへの支援を続けているG7だけでなく、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国のトップとも。
さらに21日は、午前中からG7首脳らと対面で会談。かつてはロシアを含めた8カ国の首脳が集い、世界について語りあう場でしたが、10年の時を経て、この場にロシアの姿はなく、ウクライナのゼレンスキー大統領が加わりました。
写真撮影では、カナダのトルドー首相に促され、首脳らの中心に移動すると、岸田文雄総理大臣とフランスのマクロン大統領と笑顔で会話。緊張した面持ちで撮影を終えると、今度はバイデン大統領が肩に手を置いて、何やら話し込みます。
岸田総理:「ウクライナのゼレンスキー大統領にも参加していただいています。ウクライナ情勢をはじめ、国際社会が直面する平和と安定への調整について、どのように対応するべきなのか。こうしたテーマを議論を深めたいと思います」
昼からは、G7以外の招待国8カ国の首脳を加えた会議に出席。ゼレンスキー大統領は隣に座るインドのモディ首相と握手し、笑顔を見せました。
ウクライナはロシアへの圧力を強化するため、経済制裁に非協力的な国々に連携を求めたとみられます。
そして午後には最大の支援国・アメリカのバイデン大統領と会談。
バイデン大統領:「あなたと、あなたの仲間が来日することができ、ご一緒できてうれしいです。そして勇敢なウクライナ国民。あなたとあなた方がロシアに対して勇敢に戦う姿は見事です」
会談でバイデン大統領は、新たな軍事支援を約束。F-16戦闘機の供与に向けて、ウクライナ軍のパイロットの訓練をヨーロッパの同盟国と共に支援すると発表しました。
ゼレンスキー大統領:「あなたのリーダーシップに感謝します」
反転攻勢のカギを握る戦闘機。ウクライナが、供与を求め続けてきたものです。
イギリスのスナク首相は、今年の夏から訓練を開始すると明らかにしました。
スナク首相:「バイデン大統領がF-16ジェット機を提供する国際連合を支持したおかげで、今回のサミットで真の突破口ができたのです」
■ゼレンスキー大統領「広島のように再建夢見る」
その後、岸田総理と共に平和公園を訪れ、原爆資料館を視察したゼレンスキー大統領。
ゼレンスキー大統領:「そこには、本当にたくさんの悲惨な写真がありました。小さい子どもたちを見ると涙が出る。実は、ウクライナでも毎日のように、このような写真を見る。どうして人間にこうしたことができるのか。特に子どもに対して、どうしてこういった恐ろしいことができるのか」
1時間後には真剣な眼差しで言葉を交わしながら、原爆慰霊碑へ向かい、花を手向けました。
その慰霊碑には「安らかに眠ってください、過ちは繰り返しませんから」と刻まれています。
まさに今、ウクライナはロシアの核の脅威にさらされています。
ゼレンスキー大統領:「今回のサミットで、これだけウクライナに対する注目をいただいたこと、ウクライナの主権、領土の統一性、ウクライナの人たちに対する支持を表明していただき、一生忘れることはありません」
被爆地「広島」から世界に向けて発信された平和の訴え。
ゼレンスキー大統領:「今の広島は、再建された街です。ウクライナは今もがれきだらけの街で、ロシアの攻撃で破壊されていない家が1つも残っていない村を一つ一つ立て直すことを夢見ています」
日本に対しても、期待を込めたメッセージを送りました。
ゼレンスキー大統領:「多くの話ができました。一番期待しているのは、やはり技術力です。ウクライナの戦後復興というのが、ウクライナ人にとって命が続いているというメッセージになります」
(「グッド!モーニング」2023年5月22日放送分より) (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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