■「株高不況」今後格差は広がる?
先月31日、大和証券の本社に集まっていたのは、株式投資で大きな利益を上げている個人投資家たちです。
個人投資家(30代)
「(Q.もうけは?)800万円ぐらい」
個人投資家(40代)
「株価が上がって文句を言う人いないですからね。景気も良くなると思う」
今年の日経平均株価は、トランプ関税の影響で4月に3万円台前半まで下落。しかし、徐々に値を上げ、先月には史上最高値を更新。一時4万3800円台まで上昇しました。
大和証券 投資情報部
坪井裕豪担当部長
「去年から始まった新NISAで、新しく投資を始めた方も含めて、多くの方がこの恩恵を享受されたのではないか」
一方、街ではこんな声が聞かれました。
パート(70代)
「パートで帰ってきたんですけれど、時給は上がらないし、収入が増えるとか、そういうのもまるでないから、何も感じない」
会社員(20代)
「物価が上がると必然的に給料が変わってないので、使う消費だけが増えて、その点は厳しくなっている」
“株高”の恩恵が実感できない人も多くいました。こうした状況を「株高不況」と呼ぶ専門家がいます。何が起きているのでしょうか?
「株高不況」の著者
第一生命経済研究所 藤代宏一主席
「企業は値上げをすることで、収益をある程度確保できている。それに対して消費者はインフレが直撃してしまう。通常インフレの局面では、株式あるいは不動産が値上がりする傾向にあるが、インフレに強い株式や不動産を持っていない方が多い。これによって株高は進む一方で、消費者の景況感はさえない。こういう二極化が進んでいるんだと思います」
背景には、日本ならではの事情が関係しているといいます。
藤代主席
「(日本は)デフレがずっと長く続いてきたので、インフレに強い資産を持っている必要がなかった。デフレの時というのは『キャッシュ・イズ・キング』と呼ばれて、現金を持っていることが安全で、同時に得策でもあった」
モノの値段が下がり、お金の価値が高まるデフレでは、現金や預金を持つことが有効な“資産防衛”の方法とされてきました。
家計の「現預金」を見てみると、1990年から2024年までのおよそ34年間で、594兆円から1550兆円まで3倍近くに膨らんでいます。しかし、3年ほど前から日本でも物価が上昇。現金の価値が目減りしていることが「株高不況」につながっています。
藤代主席
「今日本で起きているのは3%程度のインフレ率。それに対して預金金利は、せいぜい0%台の前半なので、インフレに勝てていない状況があるわけです。企業の利益がすべて従業員に還元される状況には、まだ相当な距離があるので、(株を持つ人と持たない人の)格差は拡大を続ける可能性が高い」
(「グッド!モーニング」2025年9月1日放送分より)
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