世界情勢

改革継承か保守への回帰か『コンクラーベ』まもなく開始“教皇選挙”世界が注目の理由【報道ステーション】(2025年5月7日)

約14億人の信者を抱えるカトリック教会のトップ・ローマ教皇を選ぶ選挙『コンクラーベ』が、日本時間7日午後11時半ごろから始まります。

バチカンは、世界一小さな国です。面積は、東京ディズニーランドとあまり大差がありません。そんなバチカンは、普段から観光客でにぎわっていますが、いまの雰囲気は特別です。

世界中から枢機卿や関係者たちが集まってきています。枢機卿は、教皇の補佐役で、教皇選挙権を持つ人たちです。

日本時間7日午後5時過ぎ、ミサが行われました。

ジョバンニ・バッティスタ・レ枢機卿
「私たちは、困難で波乱に満ちた複雑な歴史の転換期に、カトリック教会と人類が必要とする教皇が選ばれるように、聖霊の助けを祈り、その光と力を懇願するためにここにいる。良心を目覚めさせる教皇を選出してください」

このあと、133人の枢機卿が礼拝堂に移動し、コンクラーベが始まります。

投票は誰にしてもかまいません。3分の2以上を獲得しないと、教皇には選ばれず、決まるまで何日でも行います。

教皇は後継指名ができません。それゆえに選挙で決めるわけですが、13世紀に3年間も教皇が決まらなかったことから、いまのスタイルが、あみ出されました。

コンクラーベの意味は、ラテン語で「鍵をかける」。決めるまでは、外には出られません。

投票用紙は、専用のストーブで燃やされ、黒い煙なら再投票。白い煙なら、新しい教皇の誕生です。

菊地功枢機卿
「教会のあり方のみを議論しています。いま、最も大切なのは、教会のあり方であり、全員が、その方向を向いているので、政治の介在する余地はありません」

カトリックの信徒は、全世界に14億人。その情報網は、教会として、先進国はもとより、途上国の奥地まで張りめぐらされているからです。

当然、次の教皇が、伝統的な価値観を重んじるのか。それとも多様性を重視し、新しい未来を模索するのかで社会のあり方は、大きく変わっていきます。

先月21日に亡くなった266代教皇・フランシスコ(88)。

フランシスコ教皇(2022年)
「多くのキリスト教徒が先住民を抑圧した植民地主義を支持したことをお詫びします」
フランシスコ教皇(2013年)
「ある同性愛者が、主を求め、善意を持っているのなら、私に裁く資格はあるのか」

在位12年の間に行ったのは、これまでのカトリック教会の常識を覆すものばかりでした。それゆえに、いまでも宗教の垣根を越えた人気があります。

インドネシア人仏教徒
「フランシスコ教皇の功績が継続されることを願い、後継者には、この両極化した世界に希望をもたらしてほしいです。次の教皇がリベラル派でも保守派でも、ひとえに世界が苦しむ状況を和らげる一助になっていただきたい」

国内に6300万人のカトリック教徒がいるアメリカ。
バンス副大統領もその1人です。2019年にプロテスタントの福音派からカトリックに改宗しました。

アメリカ バンス副大統領
「カトリックは、家族に重きを置くところで、最もしっくりきた。男性的な美徳と女性的な美徳を本当のキリスト教徒は気にするものだ」

男性と女性の役割を明確にし、伝統的な家族観を重要視するものです。トランプ政権になり、アメリカで多様性が次々と失われていくなか、もし、保守的な教皇が生まれた場合、それはより加速するかもしれません。

アメリカ人観光客
「苦しみや戦争、国内外で起きる分裂。それを癒やせる人に現れてほしい。人々をひとつにし、憎しみや分断より、愛と団結のメッセージを広めてほしい」

◆現地バチカンにいる日本大学国際関係学部の松本佐保教授に聞きます。松本教授は、宗教と国際政治の関係が専門です。

(Q.12年ぶりとなるコンクラーベですが、この12年の間にずいぶん時代も変わったと思うのですが、いまの時代に行われるコンクラーベの意味合いというものを、どのように考えていますか)

松本佐保教授
「前回は、ベネディクト16世が生前退位をされ、その前に、カトリック教会内の不祥事が表沙汰になり、信者の数が減るという危機的な状況でした。ですので、フランシスコ教皇のような改革派教皇が選ばれることが望まれ、実際、そうなりました。教会内での改革は進んだものの、残念ながら、国際情勢の方は、ウクライナとロシアの戦争やガザ危機、また世界に分断が広がるという状況になっております。今回のコンクラーベにおいては、こうしたいまの不安定な国際情勢に対して、紛争を仲介する、そういう方の誕生が望まれる、それが今回のコンクラーベの意義と思っています」

(Q.いま、枢機卿がいる場所というのは、一切の通信が遮断、外界と遮断された状態だということですが、中では何が行われているのでしょうか)

松本佐保教授
「通信などが遮断される場所が、つまりコンクラーベが行われる場所、システィーナ礼拝堂。ミケランジェロの壁画などがあって、観光名所でもありますが、そちらに随時、枢機卿が一人ずつ入っていきます。一人ずつ誓いを立てて、外部に情報を漏らさない、そして、最良の候補を選ぶということを誓ってから入っていきますので、それまでには一定程度の時間がかかり、それが終了して、全員が入った後、鍵をかけて、一切、外部との通信などは遮断されるという状況です」

(Q.1回目の投票が行われるのですが、結果は1回で出るということは考えにくいとみていいですか)

松本佐保教授
「はい、私はそのように考えております。また、バチカンの関係者にもお話を聞きましたが、それによりますと、1回目で結果が出ることは考えにくくて、なぜならば、票が割れてしまうということで、89票を取るということを考えると、1回では決まらないと思います」

(Q.1回目の投票結果を踏まえて、2回、3回という過程で票が収斂していく、ある意味、多数派工作というのでしょうか。そうした駆け引きようなものが行われていくのでしょうか)

松本佐保教授
「はい、私は、そのように見ております。実際、投票している間は、私語などはできない。そうなってくると、食事の間、あるいは散歩をしたり、そういう合間のところで、お互いに話をして、場合に…

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