被害者を取材すると、そこには新たな手口があることが分かった。
■総額1400万円投資…口座“突然凍結”
国際ロマンス詐欺被害に遭った鈴木さん(仮名・45歳):「私の貯金を全部もっていったので、何としても捕まえてもらいたいと思っています」
横浜市に住み、福祉関係の仕事をする鈴木さん、45歳。今年1月、国際ロマンス詐欺の被害に遭った。
鈴木さん(仮名):「本当に、何か結婚するのが前提みたいな感じの会話にどんどん進んでいったので」
30代のときに結婚するも、5年ほどで離婚。現在は独身の鈴木さんの日課は、日常の写真をSNSに載せることだった。
今年1月、近所の野良猫の写真を載せたところ、突然メッセージが届いた。
日本語でメッセージを送ってきたのは、シンガポール人で“ダビ”と名乗る男。貿易会社の社長をかたっていたという。
そのダビは、鈴木さんが、朝起きる時間になると…。
鈴木さん(仮名):「『親愛なる妻、おはようございます。きょうが良い一日になりますように。起きました』みたいなことをメッセージくれます。とにかく、何かマメなんですよね」
そして、ダビと写真交換をすることになり、写真が送られてきた。写真の男性は、韓流アイドルを彷彿させる端正な顔立ちだった。
鈴木さん(仮名):「すごくハンサムで、格好いい人だなと思いました。それで、ちゃんとしてる人なんだろうなと思ったので、そのまま信じてしまいました」
そして、この「ダビ」と会ったことがないまま、結婚を前提とした関係に。
すると、ダビから「将来の生活資金を増やそう」と誘われた鈴木さんは、ある仮想通貨の投資サイトに合わせて5回、総額1400万円を投資した。しかしその後、口座は突然凍結されたという。
鈴木さんは、消費者センターに相談し、国際ロマンス詐欺だと気づいたという。
鈴木さん(仮名):「日本の男性だと、こんなに“愛してる”とか言わないと思うんですけれども。その辺を全然気にせずに、彼は言ってくるので。久しぶりに、こう異性から、こんなに優しい言葉を掛けられたっていうのが、何かすごく純粋にやっぱりうれしくなってしまうんですよね」
■注意すべポイントは…送られてくる「写真」
恋愛感情を抱かせたうえで投資を促し、金をだまし取るロマンス詐欺の被害が今、増えている。
国民生活センターに寄せられた相談件数は2018年は12件だったが、2021年には187件と急増した。
国際ロマンス詐欺撲滅に取り組む新川てるえ氏によると、近年、この詐欺にも変化が出てきているという。
NPO法人 CHARMS・新川てるえ氏:「以前はアフリカ圏からの詐欺で、軍人、軍医を名乗るものが国際ロマンス詐欺だったのですけど。ここ2、3年は、アジア圏の詐欺も増えていて。投資がからむ国際ロマンス詐欺というのが増えました」
そして、国際ロマンス詐欺の注意すべきポイントの一つは、送られてくる写真だという。
新川氏:「共通しているのは、まずイケメンであること。それから爽やかに見えたりとか、スポーツマンに見えたりとか、ちょっとお金持ちだったりとか、好印象なタイプの写真を使って接近してきます」
■投資の話が出てきたら…「疑ってください」
そしてもう一人、国際ロマンス詐欺の被害者がいる。
国際ロマンス詐欺被害に遭った山中さん(仮名・41歳):「私の子どもと、すごく仲良くなりたいとか、親子になりたいとか」「人の信頼するような心とか、そうした心を踏みにじられるダメージは大きい。すごく、それが一番卑劣だと思います」
京都に住む山中さん(仮名)、41歳。5歳の子を持つ、シングルマザーだ。
マッチングアプリで、再婚相手を探すなか、今年3月、アプリ内で出会ったのが、自称・大阪在住の「サイトウ・コウジ」と名乗る男だった。
山中さん(仮名):「シングルマザーとしては、子どもがいるということが重要で。それを受け入れてくれる相手じゃないと、良い関係が持ってないので。そこが受け入れられたっていうことが、一番うれしかった」
ただ、メールをやりとりするなかで、違和感を覚えることもあったという。
山中さん(仮名):「こんなに日本語ができないものだろうかというレベルの日本語感で。日本人ではないなっていう感じがした」
しかし、「サイトウ」と名乗る男は海外生活が長いため、日本語が苦手だと説明したという。そして、山中さんは子どもの将来のためと言われ、「サイトウ」から仮想通貨への投資をすすめられ、計470万円を投資した。
出会いから3週間後、投資した金額が手数料を払わないと引き出せないと言われたため、詐欺に気がついたという。
山中さん(仮名):「子どものために貯めていた保険を解約したものが入っていたので。一番悔しい」
国際ロマンス詐欺撲滅に取り組む新川氏は、注意すべき点について、次のように話す。
新川代氏:「ターゲットにされる人というのは幅広くて、年齢・男女関係なくターゲットにされるので、自分は大丈夫だと思うのは、本当に危険。投資の話が出てきたら、そんなに簡単にもうかる話はありませんので、疑ってください」
■世界中で被害相次ぐ…国際ロマンス詐欺が国際化
「国際ロマンス詐欺」の被害報告は、日本だけではなく世界中で起こっている。
イギリスメディアによると、「国際ロマンス詐欺」の被害総額はイギリスではおよそ154億円。オーストラリアでも「競争・消費者委員会」によると、被害額はおよそ37億円に上るという。
そしてアメリカでは特に被害が大きく、連邦取引委員会によると、2022年の被害総額がおよそ1810億円だったという。
傾向としては、コロナ禍を境に増加しており、特に独り身の高齢者が狙われているそうだ。
こうした状況を受け、アメリカのFBI=連邦捜査局は、国際ロマンス詐欺の特設サイトを設け、実際の被害に遭った81歳の女性が体験を告白する動画を公開し、警鐘を鳴らしている。
グレンダさん(81):「…